2014年7月13日日曜日

悪霊たちよ、さらば

[聖書]ルカ8:26~39、
[讃美歌21]361,7,401、
[交読詩編]33:4~11、

W杯は10日の準決勝で、アルゼンチンがオランダに劇的なPK勝ち。ドイツと決勝
戦。
アルゼンチンは勝ちにこだわった、と評されます。どこだって勝ちたいものです。
その上、アルゼンチンは7月9日が独立記念日でした。『ヌエベ デ フリオ』、
タンゴの名曲も作られています。特別、勝ちにこだわったとしても、許せる気がし
ます。
この国はスペイン語を話します。さようならはアディオス。気分としては、長い
お 別 れ で す 。 英 語 で は 短 い 別 れ に 、 see you、 so longな ど を 使 い ま す 。 ス ペ イ
ン語はチャオ、と言います。友人に別れを告げるなら、アディオス ムチャーチ
ョス。
本日の説教題は、アディオス デーモン、とでもなるでしょうか。
さて、前週は、突然の嵐の中、主イエスが乗る小船の中で起こった物語。
主イエスは波と風を鎮め、船は目指すゲラサの地に着きました。
そして今朝は、ゲラサの地、悪霊に憑かれた男の物語。
ゲ ラ サ 、 ガ リ ラ ヤ 湖 東 岸 。 〈 ガ ダ ラ 人 の 地 〉 ( マ タ イ 8: 28) ま た 〈 ゲ ラ サ 人 の
地〉(マルコ5:1、ルカ8:26、異本にはゲルゲサ人の地)と記されています。湖
の東岸中央のやや北寄り、ワディ・エ・セマクの落ち口にケルサ、もしくはクルシ
と 呼 ば れ る 村 が あ る 。 そ こ に は 峻 坂 の 断 崖 が あ り 、 豚 の 群 れ が 〈 が け か ら 海 へ
な だ れ を 打 っ て 駆 け 下 り 〉 、 死 ん だ 情 景 を 偲 ば せ る 。 こ の 付 近 に は 岸 壁 を 掘 り
込んで作った墓や、石器時代の遺物が見られ、狂人はそこに身を隠していたので
あろう。(1962年出版の書籍)
1990年 の 註 解 書 に は 、 新 し い 知 識 が あ り ま す 。 し か し 、 そ の い ず れ も 湖 か ら
53km、10km、遠すぎるように感じます。主イエスの出来事は、湖に近いところと
考えられます。
ここに、悪霊に憑かれた男がいました。
この男が、イエスを見るなり叫び出しました。28節、
この人に取り付いている悪霊が言わせる言葉に違いありません。
初 め は 、 「 い と 高 き 神 の 子 イ エ ス よ 」 。 イ エ ス が 神 の 子 で あ る と 知 り 、 そ れ を
告白している。
悪霊も神の子を知り、それを言い表します。
しかし、関係をもつことを拒絶しています。これは悪霊自身が、神の子の力を恐
れていることに他なりません。イエスによって苦しめられる、と感じているので
す。
そこで、苦しめないでください、と願う。
どうやら、ここまでに悪霊はイエスに、この人から出て行くように言われたらし
い。29節
 イエスは、彼に尋ねます。「なんという名前か」、古代世界では、名を知るこ
とは支配すること、と信じられていた。
彼 は 答 え ま す 。 レ ギ オ ン で す 。 た く さ ん の 悪 霊 が 、 と い う の は 記 者 の 説 明 で
す。
レギオン、古代ローマの軍隊の呼称、一軍団はおよそ重装歩兵6000人から成る。
百人隊が十個で千人隊、実際は80人2隊で1マニプルス・中隊、これを3隊連結して
大隊・コホルスが、行動時の中核となった。
軍団兵の実数は、時代と状況によって異なります。ここでは、悪霊に憑かれて
いた男の
名であるので、通常「多数」という意味とされてきました。
この悪霊は、底知れぬ所に落ちて行くことを、お命じにならぬよう、イエスに願
います。
悪霊は、本来、底知れぬところがその住処と考えられます。何故そこを拒むのでし
ょうか。
主イエスは、底知れぬところに対しても支配力を持つことを知っていたかもしれま
せん。
彼らでもそこを拒むほどに苦しく、困難なところ、と考えるのではないでしょう
か。
悪霊は、豚の群れの中に入らせてください、と願います。
豚、旧約聖書は、これを食べることを禁じています。汚れた動物
「また豚、これは、ひずめが分れているけれども、反芻しないから、汚れたもので
ある。
そ の 肉 を 食 べ て は な ら な い 。 ま た そ の 死 体 に 触 れ て は な ら な い 。 」 申 命 記 14章
8節
生産者がいれば、当然それを購入し、消費する人たちがいるはずです。死海東岸に
は、ア
ンモン、モアブ、エドムの人々がいます。アブラハムの子孫とされているが、イス
ラエル
とは敵対していたようであり、どの程度律法を守っていたかは不明。ローマの軍
団、商人
たち、その家族・関係者などギリシャ・ローマ世界からの滞在者、移住者たちがい
ました。
彼らは、このゲラサの人たちの良いお客さんだったでしょう。
良い取引によって利益を上げ、それを再投資しながら飼育頭数を増やしてきたの
でしょう。
悪霊に憑かれた男、よくゲラサの狂人と呼ばれていたようだ。気違い、狂気
ダイモニゾマイ、ダイモーンの力のとりこになっている、死者の霊に取り付かれている、
悪霊につかれている、
ダイモニオン(古典)神的存在、死んだ英雄の神格化されたもの、行伝17:18、
(旧約)異教神、偽りの神々、
(新約)悪霊、悪鬼、死者の霊、死霊、他の表現についてはプニューマを見よ。
  プニューマ;悪霊、死霊...生者に作用して悪い影響を与える無形の人格的存
在、
きちがい【気違(い)】[一](3)常人とは異なる精神世界に住し、その言動が常識とは相容(イ)れな
い・こと(人)。〔精神病・精神分裂症(にかかっている人)の俗称としても用いられる〕「―に刃
物」
[二](造語)度を過ごして物事に熱中する・こと(人)「本―(4)(3)」[表記]「気《狂い》とも書く。
三省堂「新明解国語辞典」による
正 直 に 言 う な ら 、 こ の 悪 霊 が 何 で あ る か は 、 今 の 私 に は 判 り ま せ ん 。 ゲ ラ サ の
狂人、これをそのようには考えられないからです。書かれた症状は、すさまじいもの
があります。全く常人とは違う、と見えます。私たちの周辺にはいない。そうで
しょうか。
豚 が 、 湖 に 入 っ て 溺 れ 死 ん だ 、 と き い た ガ ラ サ の 人 々 は 、 イ エ ス の と こ ろ に や
ってきました。そこで、悪霊を追い出していただいた人から事情を聞きます。一
人の人が救われたことを聞いたゲラサの民衆は、イエスに立ち去ることを求めま
す。
彼らはイエスを恐れます。自分たちにはない力を持っています。しかもそれは、
自 分 た ち の 大 事 な 経 済 生 活 を 破 壊 し か ね ま せ ん 。 個 人 の 人 格 の 回 復 よ り も 、 自
分たちの経済が大切だ。冷静に考えると、これは私たちの世界のことではないで
しょうか。経済・財政上の損得のために人命を犠牲にするような戦争の準備をす
る。ゲラサの人々を笑うことは出来ません。まさに私たちの唯中に悪霊・レギオ
ンが入り込んでいます。
主イエスは、異邦人の住むところで、悪霊を追い出されます。
伝 道 者 パ ウ ロ は 、 信 仰 ・ 宗 教 の 名 の 下 で 経 済 活 動 を 第 一 に 考 え る 人 々 と 対 立 し
ていました。たとえば、言行録19:25「この仕事のお陰で、我々はもうけているの
だが、」エフェソのアルテミス神殿の銀細工職人デメテリオの言葉です。パウロの
伝道が成功したら、自分たちの生活が危うくなる。従来の経済秩序が成り立たな
くなる。真理問題などではありません。
教会員原簿に「陪餐停止」と書かれていた、とお話したことがあります。不行跡の
故 、 と あ り ま し た 。 そ の 意 味 を 古 い 教 会 員 に 聞 き ま し た 。 「 礼 拝 の 時 間 に 村 の
寄り合いに行ってしまった事です。行かなければ村八分、田んぼに水を引けなく
なってしまうさ。」
悪霊は、私たち一人ひとりの中に住み着いている何者かのようです。自己正当化
の霊も。
多 く の 人 が 、 そ う し た 苦 し い 事 情 の 中 で も 、 罪 の 赦 し を 求 め て キ リ ス ト に 従 い
ました。
私の中では、経済の問題は、偉くなることに結びつきます。キリスト信仰は偉く
なることに訣別することです。人からの賞賛を求めるのではなく、神を讃美し、人
に仕える生き方を進めることです。
私の人生を、このお方に委ねましょう。そして、アディオス、悪霊!